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help リーダーに追加 RSS ブロードハースト『ディープアップル』『バノフィーパイ』『メイズオブオナー』

<<   作成日時 : 2006/10/20 21:58   >>

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大阪・玉造にある「ブロードハースト」さん。雑誌などでもおなじみのイギリス人シェフ、ブロードハースト・ピーター・ジョンさんのお店。05年6月9日以来、2度目の登場です。
今回はイギリスの伝統菓子をまとめてご紹介しましょう。販売スタッフの方にお菓子のことを聞いていたら、ピーターさんが奥のキッチンからイギリスの伝統菓子の歴史やあれこれについて、すごく嬉しそうにお話してくれました。
その内容をもとに、資料などで補足しながら書くことにします。

画像●『ディープアップル』、直径9cm、高さ4.5cmほど。
これはピーター・ジョンさんのお母さんが、サンデーランチによく焼いてくれていた思い出のお菓子。
単純にサブレ生地でリンゴを覆って焼くだけのもの。イギリスには生食用以外にクッキングアップルという酸味のきつい、過熱して美味しくなるリンゴがあって、そのリンゴでないと美味しくないのだそうです。ブラムリーとウィルクスという2種あるそうですが、日本の品種では紅玉がやや近く、紅玉が出るシーズンだけ作っているとか。
ディープ、って何が深いの? と思ったら……元々、パイディッシュという深皿にリンゴを盛り、さくさくとした感じに焼き上がるショートクラスト生地で覆って焼くのが一般的。浅いパイ皿ではなく深いからディープ・アップル。作る手間も、材料も簡単でいかにも家庭のお菓子を思わせます。
お店のものは底にも生地を敷いてあり、生地の香りも豊かでリンゴの旨味を引き立てています。単純ですが記憶の底に残るタイプの味と言えそうです。


画像●『バノフィーパイ』、直径8cm、高さ4cmほど。
こちらもイギリスでは一般的で、近所のスーパーなどでも置いているたぐいの日常的なお菓子だそうです。
バナナと生クリームとトフィーパイの組み合わせ。バナナとトフィーで「バノフィー」、バンザイ、バンザ〜イというような安直さですが…、このトフィーの作り方が凄い! なんと練乳(コンデンスミルク)の缶詰めをそのまま2〜3時間湯せんにかけてキャラメルにしてしまうというのです。
彼はこれは甘過ぎる(私も時おり湯せんしてパンに付けて食べたりしますが、なかなかの甘さです、ふふふ)、というので、ブロードハースト流にアレンジ。
生クリームをたっぷり使うので、冷蔵ケースで販売。その際、タルト生地だと湿気るのでバターケーキの生地に変更。生地にはチョコと蜂蜜のクランチが食感と味の深みのために加えられています。そして、その上にはバナナのスライスとコンデンスミルクのキャラメル風味の生クリームがたっぷり。
優しい甘さに整えられても、バナナとの相性は抜群。凝った生地に換えられた分、変化に富み、値段に見合ったスペシャリテに変貌を遂げています。これこそ伝統に沿った創造の見本、でしょう。
美味しいッ! 大好きなパイです。

画像●『メイズオブオナー』、直径7.5cm、高さ2cmほど。
これは600年前のヘンリー8世の時代にまで遡る古いおやつです。
昔観た映画に「1000日のアン」というのがありました。ヘンリー8世と侍女のアン・ブリンの結婚の物語。結婚するには女王との離婚が先決、だけどローマの法王庁は認めてくれません。そんなことなら、法王庁の支配下から脱した独自の教会を作ろう。英国教会のはじまり、どうも色事のスキャンダルの絶えないイギリス王室らしいエピソードです。
その主人公のアン・ブリンがほかの侍女たちと食べていたのがこのお菓子。この侍女たちをメイズ・オブ・オナーと呼んだので、お菓子の名に付いたという次第。長らく門外不出のレシピとなり王宮のなかでしか食べられなかったとか。
18世紀最初に販売したのはリッチモンドのヒルストリートにあったパン屋さん。そこで働いていた職人さんが独立して開いたお店が、今でもオリジナルのメイズ・オブ・オナーを売る「ニューエンズ」。キュー・ガーデンズの近くにある有名店です。
昔からフィユタージュに牛乳から分離した固形分を乗せて焼くというレシピは変わらず、イギリスの代表的なチーズケーキという位置付けを得ているもの。
ブロードハーストではカッテージチーズを使い、独自のレシピとしてはチーズとフィユタージュの間に薄くアプリコットジャムを塗るだけという、最小限のアイデアに止めているそうです。
ちなみに「フィユタージュを使っているから、これもパイですね?」と尋ねると、ニコニコ笑顔でちょっと困ったように「ううん、これはチーズケーキ」。日本人のパイの定義には慣れているでしょうが、やはり断固、違うんだよね〜ということのようです。

イギリスでパイとは、パイ生地のことではなく、あくまでパイ皿を使ったものを指すのだそうです。パイ皿とは円形で立ち上がりの部分が斜めに角度の付いているもの。直角の立ち上がりのものはタルト皿と区別されています。そしてパイはフィリングの上を生地で覆うものが多いのだそうです。
日本に食べ物と言葉が導入される時に、背景の文化が置き去りにされ、いろいろな国の言葉がごちゃごちゃにされたので、このような混乱が起こったのでしょう。
日本におけるパイの幅広さ・豊かさにもつながるので、「パイ日和」の立場からは、この混乱を歓迎することとしましょう。
本来ならこのお菓子は「パイ日和・おまけ」のほうで紹介すべきなのでしょうが、日本人の定義にしたがって「パイ日和」でご紹介することにしました。笑って許して♪〜、ピーターさん!


「ブロードハースト」さんの創作菓子はこれらの伝統菓子の記憶に支えられていると思います。
創作の生ケーキが注目されがちですが、一度ぜひ焼きっぱなしのお菓子が並んでいるコーナーもじっくり見てください。



●『ディープアップル』390円  『バノフィーパイ』420円  『メイズオブオナー』265円

●「ブロードハースト」
 大阪市中央区玉造2-25-12  TEL06-6762-0009  定休日/月曜

※ブログ「パイ日和・おまけ」(http://pie-omake.at.webry.info/)、はじめました。よかったら、どうぞ。

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